本書掲載の詩のご紹介



終わりの意味


終わりには意味がある
物事が終わると、それと同時に、また新しい何かが始まる

だが、新しい始まりもまた、
いずれは終わる運命にある

そもそも、人は皆、この世に生まれても、
いずれは死に至る
いわば、人は、死に至るために生まれてくるようなものだ

よく考えてみると、
人は、必要な分だけ食べて、
必要な分だけ善く生きればそれでいいのだが、
実際、東にも西にも、それだけで満足する人はほとんどいない

人は本来、食べても食べても、
またさらに、人よりも多く食べようと欲する“貪欲な存在者”だ

その貪欲さこそが、
人を、人としての道から逸脱させ、
人を不幸に導くのだ

私は、ここで、もう一度叫ぼう

人は、必要な分だけ食べて、必要な分だけ善く生きればいいのだ

人はこのことさえ堅持し続ければ、
その短い生涯において、
そう滅多には、人を憎むような事態に陥ることはない
(出典:“終わりの意味”、生井利幸先生著「文明の墓場 哲学詩」(成隆出版)、46-48ページ)