本書掲載の詩のご紹介
良心の涙
人間は、しばしば、良心の声を聞く
人間は、自分の行動に疑問を感じたとき、
“こうしなさい”という囁(ささや)きを耳にする
囁きが聞こえるのは、自分自身において、それを聞こうとする姿勢があるからだ
では、たとえ囁きがあっても、その囁きを耳にすることができない人はいるのであろうか
この世において、自己を自己と認識し、自己として生きている存在者である限り、
そうした囁きを耳にしない人はいないだろう
人間は、極悪非道な行為をするときでさえ、
良心の声を耳にする
極悪は、悪の極み
非道は、人間としての道であらざること
通常の生活をしている人は、自分を、“常識人”と呼ぶ
だが、常識人といえども、人生におけるどこかの時点で、道を大きく外し、転落の人生を歩む人もいる
結局、人間の生き方の価値は、
自分の心の中で良心の声を聞いたとき、“それをどう聞くか”によって変わるのだと思う
限りなく多くの常識人は、“人間の命”について、
それを、この世における最も大切なものだと断言する
だが、実際、人間は自らの生活において、
生きるか死ぬかの瀬戸際にいる人を目の前にして、
しばしば、見て見ぬふりをする
(出典:“良心の涙”、生井利幸先生著「文明の墓場 哲学詩」(成隆出版)、66-69ページ)